愛知県稲沢市在住の【中小企業診断士✖️IoTプロフェッショナルコーディネーター】が、ものづくりの楽しさを簡単にやさしくお伝えする《がちゃラボ》です。
今回はあまり楽しくない話かもしれません。話題のAI(人工知能)やロボット技術ですが、このまま進化していくと、人間の仕事が無くなってしまうかもしれない、という話です。そういった話が意味するところは本当は違うところにあるのですが、「仕事が無くなる」って脅しを掛けられてる感じはしますね。
シンギュラリティ(技術特異点)のおさらい
以前の記事で、人工知能が人間の知能を追い越すとき、これをシンギュラリティ(技術特異点)に関して書きましたが、その時、人間と機械(AI・ロボット)の関係はどのようになっているでしょうか。
例えば、10桁の数字同士の掛け算を、人間は一瞬で行うことは不可能です。世界を見れば、どこかにはそういう人もいるかもしれませんが、稀な存在だと思います。しかし、電卓であれば一瞬です。我が家には12桁まで計算できる電卓がありますが、そこまでの計算であればほぼ待ち時間もなく、答えを弾き出してくれます。
人工知能がこのままどんどんと賢くなっていくと、自分自身よりも更に賢い人工知能を作りだす可能性があります。そこで作られた人工知能が更に自分よりも賢い人工知能を作り・・・というのが無限に繰り返されます。すると、有るタイミングで人間の知能を超えます。
計算という世界においては既に人間は電卓にも敵わないですが、物事の判断や正確な制御という世界でも人間が機械=人工知能やロボットに敵わない、そんな時代が到来すると見られています。そうなると、多くの仕事が人工知能やロボットに置き換わっていきます。
47%の仕事が人工知能やロボットに置き換わる!?
ここに、野村総合研究所と、英オックスフォード大学のマイケル A.オズボーン准教授とカール・ベネディクト・フレイ博士の共同研究のデータがあります。どのような研究を行ったかというと、国内にある601 種類の職業に関して、今後人工知能やロボット等でどの程度代替されるか、その確率を試算するという研究です。その結果が下記のグラフになります。
このデータによると、置き換わる可能性の高い職種として
- 交通や物流
- 製造
- 建設
- オフィス業務
- 販売
- サービス
等が挙げられています。そして、それらの仕事に従事している人が、労働者の実に47%を占めているという結果です。47%というと半分ということです。世の中の働いている人々の半分の人の仕事は、人工知能(AI)やロボットに置き換わる、という研究結果でした。驚きの結果ですね。
どのように置き換わるか(製造)
では、これらの仕事がどのように置き換わるのか、まだ来ぬ未来ではありますので予想を交えてお話ししようと思います。ただ、筆者自身が現在製造業に従事していますので(大きなくくりでは製造業で、職種はプログラマです)、製造業での現在の仕事がどのように置き換わるのか考えてみたいと思います。
生産ライン、組み立て
生産ラインについては、大手の企業では既に自動化されています。某自動車メーカの工場を見学したことがありますが、その空間に人は全くいませんでした。人の代わりに動いていたのはロボットです。ロボットアームですね。細かな部品の組付けから、大きな重量物まで、どんなものでも正確に寸分狂わずに組み合わされていました。モノが大きいため超高速、というわけではありませんが、決まった間隔でアームが動作し、そして時間内に決められた数の製品が次々に作られていく様は圧巻でした。
この流れは、大企業のみならず中小の工場へも広がると考えています。なぜなら、今後さらに人材不足に陥り、人が確保できなくなるためです。
よって、近い将来組み立て工場からは人がいなくなるのではないかなと思います。(管制センターのようなところには人が必要ですが)
検査
検査や品質保証という分野も、現在は機械・AIに置き換わりつつあります。
外観検査(製品の見た目の検査)は、画像の照らし合わせで検証できるため、画像認識AIに取って代わられようとしています。今までは職人さんが目で見て、製品の良し悪しを判断していましたが、やっぱり人の能力にも限界はあります。加齢による視力の衰え、疲れによる判断ミス、あるいは、経験不足による不良品の見逃しなど、これらは仕方のないことです。
そこで、画像認識や音声認識の技術を用いて、外観の検査や音による異常検出が導入されています。ひょっとすると、前述の組み立てよりもこの分野の方が早く進むのかなと考えています。
設計
組み立てや検査からは少し間をおいて、設計という分野もAIに置き換わるのではないかと考えています。筆者が普段行っている領域ですね。人工知能に最適な製品の情報を学習させると、「こういったものが欲しい」という問いかけから最適な設計図を引いてくれるかもしれません。そして、それらを最適に制御するようなソフトウェアも自動で作られる可能性もあります。
ソフトウェアの分野においては、モデルベース開発という手法があり、モデリング図(図形を並べたもの)からプログラムを吐き出す技術は既に確立されています。先日もモデルベース開発に関してニュースで取り上げられていました。
ということで、設計という分野も人工知能・AIに取って代わられる可能性はあります。
じゃあ、人間の仕事がなくなるのか
上記のように、例として挙げた製造業では、人工知能やロボットに代替可能な領域が多く、人間が行う作業は少なくなると思います。おそらく他の業種でも同様な流れになるかなと思います。
じゃあ、そういう世界になったら人間の仕事はなくなるのでしょうか。まあそういう記事をよく目にしますが、筆者の考えとしては「No」です。
確かに今まで人間が行っていた仕事は減るかもしれません。ですが、その分人間にしかできない仕事というものがはっきりしてくると思います。例えば、クリエイティブな領域だったり、基礎研究のような部分であったり。こういった領域が機械に置き換わるようになるまでには、そうとうな時間が掛かるのではないかと予想しています。
よって、「仕事が無くなる」とおびえるのではなく、新しい仕事を創造することが大切なのかなと日々考えています。
まとめ
今回はAI(人工知能)やロボット技術が進化した先に、現在の仕事がどうなるのかを考えてみました。後ろ向きに考えるのではなく、己を磨く、自己研鑽が大切ってことですね。
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