愛知県稲沢市在住の【中小企業診断士✖️IoTプロフェッショナルコーディネーター】が、ものづくりの楽しさを簡単にやさしくお伝えする《がちゃラボ》です。
以前の記事で、IoT製品(スマート製品)には、4つの段階がある、というお話をしました。今回はその4つの中から、最初の段階である「モニタリング=見える化」についてお話しします。
尚、スマート製品の4つの段階については、次の記事をご参照ください。
1つ目の段階が「モニタリング=見える化」の理由
マイケル・E・ポーター教授たちは、スマート製品であったりIoTのシステムは、必ず見える化の段階を経ている必要があると説いています。
見える化が出来ていないのに、自動でモノを動かすとか、機械自身に何かを考えさせるという事は不可能である、とそう説明しています。
では、具体的な製品で考えてみましょう。
例)AI機能搭載のエアコンの場合
最近では、AI搭載のエアコンというのも珍しくなくなりました。新製品っていうと、ほぼ付いている機能ではないかなと思います。
どんな機能が付いてる?
では、エアコンに搭載されているAI機能とは、どのような事をしてくれるのでしょうか。それは、室内の温度を住人が考える最適な状態に自動でコントロールしてくれる、というものです。
上記の一文の中には、「コントロール(制御)」だとか、「最適な」とか、「自動で」という言葉があります。これは、ポーターさんが説くスマート製品の4つの段階の2段階目から4段階目に相当します。
これらの2段階目以降は、なにを元に実現されているでしょうか。それが、見える化で得られるデータたちです。
エアコンのAI機能で使われるデータ
快適な温度に保つためには、現在の室温が必要です。また快適な空間を、と考えると、湿度や時間帯という情報も必要です。
また、住人の有無を判断して、電源オンオフを切り替えたり、風向きを変えたりしますが、その時には人感センサーで人がいるかいないか、どの方向にいるかという情報を使っています。
省エネ機能を使う使わないという設定情報も、人が与える重要なデータとなります。
このように、AI機能搭載のエアコンはその全ての機能を実現するために、非常に多くのデータを必要とします。データを集める=見えるようにして活用して初めて、自動で制御するということができるようになります。
例)自動運転の車の場合
筆者は本業で自動車を制御するプログラムを作っているので、語ろうと思えば何ページでも語れます。が、そこまで1つを掘り下げると分かりにくくなってしまうので、イメージでお伝えします。
自動運転車の機能って?
自動運転車には様々な機能が付きます。最近では、自動車が会話するようになって、乗員の話し相手になってくれます、という記事を読みました。そういった空間を快適にする機能もあれば、当然車ですので走ることに関する機能もあります。
例えば、道路のレーン(白線内)から外れないように走る、という機能もあります。また、前の車にぶつからない様に自動でブレーキを掛けるという機能も、自動運転を行う上では必要となります。あとは、最適な経路を選択して最短距離で運転するとか、より危険の少ない道路を選んで走る、という機能も組み込まれると思います。
そこで使われるデータ
上記で挙げた機能はホンの一部ですが、これらは全てデータがあって成立する機能ばかりです。例えば、レーンを守って走るという場合には、白線を検知する画像データは必ず必要です。また、現在の速度はどのくらいかという情報も必要です。また、前車との衝突を防ぐためには、前の車との距離データが必要となります。
これらの1つでも欠けると、上記で挙げた機能は実現できず、自動運転車は成立しません。このことからも、いかに現在の状態を見えるようにするか、という見える化(モニタリング)が重要であるということが分かります。
工場IoTシステム
ここまでで、いかに最初の段階の「見える化」が重要であるかということをお伝えしてきました。この見える化ですが、最初の段階ではありますが、しっかりと取り組むことで様々な効果を得ることができます。
その例として、最近の「よくある工場IoTシステム」を少し紹介したいと思います。
よく有るのは『古い設備×IoT』というシステム
筆者が中小診断士&IoTプロフェッショナルコーディネータとして中小の工場に伺うと、生産性の改善ということでIoTシステムを導入している工場があります。中小の工場ですので、そこまでの資金の余裕があるわけでもなく、知恵と工夫でIoTシステムを構築し、改善に役立てています。
どのようなシステムが導入されているかというと、マイコンと呼ばれる小さなパソコンと、数百円のセンサーを使った簡易的なシステムが構築されています。そのセンサーは、昔ながらの設備に取り付けていて、決して高いシステムを購入しているわけではありません。
モノを生産するときに設備を動かすわけですが、その動いている/動いていない、という情報を安いセンサーでモニタリングします。その結果を、小さなパソコン(マイコン)に送り、そして、
- どの程度設備が動いているか
- どの程度設備が動いていないか
を見えるようにします。そうすると、動いていないときに何が起きているか、工具を変えているのか、単純に作業員が休んでいるのか、を分析することができます。そこから、何か改善できることは無いかなと考えて、業務改善を行っているのです。
このシステムでは、設備の稼働率を見えるようにしています。そして、その結果を用いて改善を行っています。これにより、年間数億円とか利益を生み出している会社もあり、いかに見える化が重要で効果的であるか、という良い事例になるのかなと思います。
制御の段階まで進まなくても、見えるようにするだけで大きな効果を生むってことですね。
まとめ
今回はスマートシステム(IoTシステム)4つの段階の、最初の段階であるモニタリング、見える化についてご紹介しました。何をするにも、まずは見えるようにすることが大切です。皆さんも、日々使っているシステムが、何を見えるようにしているシステムなのか、考えてみるといいかもしれないですね~。
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